ABOUT THE MOVIE

INTRODUCTION

『リンダ リンダ リンダ』『苦役列車』『もらとりあむタマ子』など、オリジナリティ溢れる青春を描くことに定評のある山下敦弘監督が、今回初めて大阪を舞台に、音楽をふんだんに使った人間ドラマを描く。山下監督のもと、才能を爆発させ圧倒的な魅力を放つのは、渋谷すばる。俳優として高く評価されながらも、〈歌い手〉であることにこだわり続けてきた彼は、本作で「歌しか記憶がない男」というキャラクターと出会い、満を持して主演に挑む。共演するのは、『ヒミズ』『私の男』などの出演作で国内外問わず高い評価を受け、弱冠二十歳にして日本映画界に欠かせない女優となった二階堂ふみ。渋谷演じる記憶喪失の男を拾って‘ポチ男’と名付け、自分の家に住まわせる逞しくも一風変わったヒロイン・カスミ役を演じ、唯一無二の存在感を放つ。脇を固めるのは、大阪や音楽に縁の深い赤犬や鈴木紗理奈、さらに天竺鼠の川原克己など、バラエティに富んだ面々。観る者、聴く者の心を掴んで離さない、新たなる化学反応エンタテインメントがここに誕生した!

STORY

大阪。広場で行われていたバンド【赤犬】のライブに、ふらふらと現れた男(渋谷すばる)。マイクを奪い、声を放つや、会場は水をうったように静まりかえる。圧巻の歌声! そのまま気を失った男だったが、目を覚ますと自分のことを何も覚えていないという。記憶喪失。傷だらけの顔。その正体と歌声に興味を持った【赤犬】マネージャーのカスミ(二階堂ふみ)は、彼を“ポチ男”と名付け、祖父と暮らす自分の家に住まわせながら、バンドのボーカルに迎えようとする。しかし、フラッシュバックで少しずつポチ男の記憶が蘇る「俺は、危険かもしれない」。それぞれの中で止まっていた時間が、また動き始める。

PRODUCTION NOTE

マルチな分野で活躍中の人気グループ・関ジャニ∞のメンバーにして、これまで〈歌い手〉であることにこだわり続けてきた渋谷すばるという存在、その表現力のポテンシャルに興味を抱いた製作陣は、青春音楽映画の決定打『リンダ リンダ リンダ』(05)の監督である山下敦弘と共にオリジナル映画に取り組むことを決めた。渋谷すばる主演を想定したとき、【大阪】で【音楽映画】という大枠は自ずと決まっていったが、その彼に絡み合わせてゆく要素として、山下監督はとあるバンド、大阪芸術大学時代の先輩でもある赤犬の投入を思いつく。「大阪に住んでいた頃、近所の新世界にゲートというスタジオがあって、そこへ行くと、いつも練習をせずに遊んでいた人たちがいたんです。どう説明していいかわからない不思議な存在ですし、そういう飛び道具みたいな案が通るかわかりませんでしたけど、渋谷君に赤犬を組ませたら面白いだろうなという確信はありました」。主人公の設定を形作る上で鍵となったのが【記憶喪失】という仕掛け。「普段なら絶対に出てこないし、やらないアイデアですが、実際起こりそうでありながら現実離れした面もあるフィクション度の高い設定も今回ならばありだと思えたんです。それが出来るのも、オリジナルならではの強みだし、渋谷君だからこそ実現可能ではないかと考えたんです」と監督は話す。そして赤犬がライブで根城としているのが、大阪はなんば千日前にある元グランドキャバレーの“味園ユニバース”。記憶喪失の男がそんな不思議で混沌とした場所へと迷い込む。かくして基本設定ができ、映画『味園ユニバース』という物語が動き出した。

赤犬のマネージャーであり、父親の残した小さなスタジオを運営するカスミを演じるのは二階堂ふみ。渋谷演じる記憶喪失の男と偶然出逢い、不思議な共同生活を過ごしていく。弱冠二十歳にしてヴェネツィア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)も受賞した二階堂、そして渋谷。年齢も過ごしてきた環境も違えど、お互い認め合い、撮影現場でもストイックに向かい合っていた。「渋谷さんは役に集中されるタイプでしたね。お互い人見知りなんで、そんなに会話を交わしたりはしなかったんですけど、いざ撮影が始まってシーンに入ると、キャラクターとして距離を一気に近づけてこられるんです。本当に素晴らしかったです」と二階堂は話す。初の単独主演で不安や悩みもあったという渋谷だが、監督は「話を聞くと、それらはどれも役に入っているからこその不安や悩みで、すごく的を得ているものだったので、全く問題なかった。しかも、彼自身、男が惚れるタイプの人で、カッコイイとかスター性があるとかだけじゃなくて、ちゃんと身近さも感じる独特の魅力があった」と評する。続けて監督は、14歳の頃にワークショップで出会っているという二階堂についてもこう評価する。「撮影時は19歳だったけど、その年で今のキャリアは役者の中でも別格。だからこそ、等身大の二階堂を観たいと思った。関西弁というハードルの高さがあった分、ただ強いだけではなく、脆さや優しさや弱さが垣間見えるカスミになったのかなと思う。本人は大変だったと思うけど、結果良かった」。渋谷×二階堂、物静かな中にも激しさを持つふたりの才能は、山下監督が紡ぎ出す物語の中で、見事にぶつかりあい高め合っている。

18歳の時からライブを観てきたバンドである赤犬と今回のような作品を撮ることは「夢だった」と言う監督は、「大阪を舞台にした自分の作品だからこそ、全く違う世界に住む渋谷君と赤犬を同じステージに立たせることができたのだと思う。赤犬の真ん中で渋谷君が歌っているシーンは、撮影しながら非常に感慨深かった」と話す。国民的なエンタテインメントグループとして、その一挙一動に注目が集まる渋谷すばると、各々別で仕事をもちながら、大阪を拠点にやりたい時にやりたいように活動するバンド赤犬。対極にいるように思えるこの二組のコラボレーションは、想像以上の化学反応を生んだ。実はこの二組、音楽を心から愛し、その楽しみ方も楽しませ方も知っているという点では、とても近しい位置にいる存在なのかもしれない。また、今回は【歌】と【大阪】を軸にした作品ということで、他にも大阪出身でレゲエシンガーとしても活躍中の鈴木紗理奈や、大阪を中心に活躍するお笑いコンビ天竺鼠の川原克己ら、個性的な面々がハマリ役で登場し、良い味を醸し出している。さらに、山下組ではお馴染みの康すおんが怪優の名を欲しいままに4役を演じ分けている事も記しておきたい。

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CAST

渋谷すばる as 大森茂雄 & ポチ男

1981年生まれ。大阪府出身。2004年に「関ジャニ∞」としてCDデビューして以降、グループのメインボーカルとして活躍。今秋、渋谷単独で出演した「テレビ朝日ドリームフェスティバル20 14」では、その圧倒的な声量と歌唱力で観客を魅了し話題を呼んだ。
今作が映画単独初主演となり、主題歌「記憶」「ココロオドレバ」を収録した自身初のソロシングルのリリースも決定。2015年1月からは、渋谷単 独の全国ツアー「渋谷すばるLIVE TOUR 2015」(全国10会場13公演)も開催予定。

二階堂ふみ as 佐藤かすみ

1994年生まれ。沖縄県出身。12歳の時「沖縄美少女図鑑」に掲載された写真がきっかけとなりスカウトされる。役所広司の初監督作品『ガマの油』(09)でスクリーンデビュー。2011年『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で映画初主演。同年、園子温監督作品『ヒミズ』で第68回ヴェネツィア国際映画祭の最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。その他、『指輪をはめたい』(11)、『悪の教典』(12)、『脳男』(13)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『四十九日のレシピ』(13)、『ほとりの朔子』(13)、『私の男』(14/第13回ニューヨーク・アジア映画祭ライジング・スター賞受賞)、『渇き。』(14)、『日々ロック』(14)等がある。

鈴木紗理奈 as マキコ

1977年生まれ、大阪府出身。1994年デビュー以降、テレビの情報バラエティ番組、映画、CMなどで活躍。現在レギュラーでは、CX「めちゃ×2イケてるッ!」、KTV「ハピくるっ!」に出演。2003年からは、MUNEHIRO名義でレゲエシンガーソングライターとしての活動も開始し、ハスキー・ヴォイスでダンスホールからバラードまでを幅広く歌いこなし、力強いライブでコアな現場でも多くのファンを魅了しているアーティストでもある。映画への出演は『ナニワ金融道~灰原勝負!起死回生のおとしまえ!!』以来約9年ぶり。

赤犬 as 赤犬

1993年に大阪芸術大学の軽音楽サークルの学生を中心に結成され、大阪で活動を開始し20年、現在も大阪を拠点とする、ブラス、ヴァイオリンを含む14名で編成されたバンド。POPでありながらブラック、メタル、ロック、演歌まで多様なジャンルを網羅し、それをさらに古今東西、老若男女が楽しめる歌謡曲にまでトンチとエスプリで昇華させ魅せてくれるオリジナリティ溢れるエンタテインメント集団。日本最大級のロック・フェス「フジ・ロック・フェスティバル」などにも出演するなど、その人気は関西にとどまらない。メンバーはボーカル:タカ・タカアキ、コーラス:ロビン、コーラス:ヒデオ、コーラス:テッペイ、パーカッション&MC:グッチ、ヴァイオリン:マルムシ、ドラム:ダイ、ベース:リシュウ、ギター:チョッピー、キーボード:オカP、キーボード:カモ、トランペット:リョウ、トロンボーン:ヨシヲ、サックス:アラタ。

1980年生まれ、鹿児島県出身。関西を中心に活躍する人気お笑いコンビ・天竺鼠のボケ担当。唯一無二のシュールな世界観で展開するコントと漫才で、第30回「ABCお笑い新人グランプリ」(09年)最優秀新人賞受賞、第35回「ABCお笑いグランプリ」で優勝を果たす。

1980年生まれ、三重県出身。2003年文学座研究所入所。2008年座員となり、舞台を中心に活躍。
映画『凶悪』(13)で第28回高崎映画祭 最優秀新進女優賞受賞。『超能力研究部の3人』(14)、『繕い裁つ人』(15)にも出演。

1978年生まれ、大阪府出身。これまで数々の映画やテレビドラマ、舞台に出演。映画は、山下敦弘監督の『苦役列車』(12)を始め、『舟を編む』(13)、『ぼっちゃん』(13)、『わたしのハワイの歩きかた』(14)、『殺人ワークショップ』(14/主演)、『まほろ駅前狂騒曲』(14)、『百円の恋』(14)、『深夜食堂』(15)など。

1985年生まれ、埼玉県出身。アルバイト先で豊田利晃監督と知り合い、『蘇りの血』(09)で映画初出演。その後、数々の映画やテレビドラマ、舞台などに出演している。
映画は、『ボックス!』(10)、『アンダーウェア・アフェア』(10)、『恋の渦』(13)など。

1938年生まれ、愛媛県出身。東宝芸能学校を卒業後、劇団「むさし野」を経て、鶴田浩二に弟子入り。ピラニア軍団のメンバーとして『仁義なき戦い』等の東映やくざ映画で活躍。近年の出演作は『のぼうの城』(12)、『はやぶさ 遙かなる帰還』(12)など。

1959年生まれ、大阪府出身。山下敦弘監督作品には『リアリズムの宿』(04)から始まり、『松ケ根乱射事件』(07)、『マイ・バック・ページ』(11)、『曇天吉日』(11)、『もらとりあむタマ子』(13)などに出演。その他、近作では『私の男』(14)、『ひと夏のファンタジア』(14)などに出演。

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DIRECTOR

1976年生まれ、愛知県出身。大阪芸術大学の卒業制作『どんてん生活』(99)で注目を浴び、続いて『ばかのハコ船』(03)『リアリズムの宿』(04)の、通称“ダメ男三部作”を完成させる。以後、『リンダ リンダ リンダ』(05)、『松ヶ根乱射事件』(07)、『天然コケッコー』(07)、『マイ・バック・ページ』(11)、『苦役列車』(12)、『もらとりあむタマ子』(13)などを発表。本作の前に『超能力研究部の3人』(14)も公開され、現在の邦画界で常に最新作が待たれる映画監督の一人。

MUSIC

主題歌 「記憶/ココロオドレバ」

渋谷すばる

2015年2月11日リリース

味園(みその)は1955年に開業した、大阪市千日前に建つビル。大阪の古き良き香りを伝える建物として長年親しまれてきた。ユニバースは、そのビルに入る老舗の豪華キャバレー。2011年キャバレー営業終了後は、その名のまま貸しホールとなり、若者たちのライブ会場としても人気が高い。新宿ゴールデン街と並ぶ、日本サブカルチャー文化の発信地、アングラ芸術の発祥地として注目スポ ットとなっている。